研究
研究の背景
アレルギー性鼻炎は鼻腔の代表的なⅠ型アレルギー疾患であり、原因物質に含まれる抗原(アレルゲン)によって、発作性のくしゃみ・鼻水・鼻づまりなど特徴的な症状を引き起こす疾患である。アレルギー性鼻炎の原因は大部分が吸入性の抗原であり、ハウスダスト、ダニ、カビなどは通年性のアレルギー性鼻炎を引き起こし、スギ、ヒノキ、ブタクサなど木や草の花粉は季節性アレルギー性鼻炎・花粉症を引き起こす。
2019年に日本で行われた耳鼻科医とその家族を対象とした調査では、アレルギー性鼻炎の有病率は49.2%にも達し、10年前の調査より有病率は10%程度も増加している。また、多様な社会において気管支喘息やアレルギー性結膜炎など様々なアレルギー疾患の合併も知られている。ただ、アレルギー性鼻炎の罹患率は日本国民の約4割に達するにもかかわらず、病院へ通う患者はその中の4割、なにも治療しないで我慢する人が4割、OTCを購入する人が2割といわれており、治療の必要性と実情が伴っていないのが現実である。
ヨーロッパを中心とした世界規模のアレルギー性鼻炎のガイドラインであるARIA(Allergic Rhinitis and its Impact on Asthma)主導のmobile Healthプロジェクトが存在している(MASK study;Mobile Airways Sentinel NetworK)。スマートフォン用のアレルギー日記アプリケーション(以下、本アプリ)を使用し、対象者に気管支喘息や鼻や眼のアレルギー症状や使用薬剤を入力してもらうことで、自己管理を促すとともに、世界規模でのアレルギー疾患の実状を調査している。
このアプリケーションはすでに世界の18言語に翻訳され、27か国・約60000人に使用されており、MASK studyはWHOのGlobal Alliance against Chronic Respiratory Diseasesプロジェクトの一つでもある。
2.研究の目的および意義
今回の研究は上記のプロジェクトへの参加と日本における現状調査を目的としている。スマートフォンアプリケーションを使用してアレルギー症状を記録し、アプリで得られたデータを利用し、本邦のアレルギー症状や治療法の現状調査を行いたい。
本研究によりアレルギー性鼻炎やそれに付随するアレルギー症状の実状調査が大規模に行われれば、日本のアレルギー性鼻炎のガイドラインへの提言や、OTCの使用率などから何が患者から求められているのかなどのニーズが明らかとなり、より良い医療への還元が可能と思われる。
また国際的なプロジェクトへの参加により、グローバルな調査が可能となることや日本と他国の比較により本邦の問題点が浮き彫りにできる可能性がある。
3.研究対象者の選定
対象者は無料で配布される本アプリをダウンロードし、「研究同意文書かつ利用規約」を理解し、同意を得たものを対象とする。対象は無作為であり、スマートフォンを使用しているもの。ただし、18歳未満は除く。
(1)選択基準:本アプリをダウンロードし「研究同意文書かつ利用規約」に同意を得た者。
(2)除外基準:18歳未満